《MUMEI》 「内館先輩来てなかった?」 藤田が俺が寂しくなる直前のタイミングを計ったかのように来た。 「連行された。」 「ぷ 二人らしい」 藤田は笑いを漏らす。 「あの人達ならずっとあんな感じでやっていそう。」 「……うんうん」 藤田が俺の机の上に自然と座る。 「……近い。」 俺を見下ろす。 「気のせいだ」 そんな訳あるか。 「お前が近いと舟に乗ってるみたいだ。」 音をたてて揺れ動く。 水面みたいに安定しない。 「俺もだよ」 「わざとらしい嘘だな」 笑う余裕まで見せて。 「好きだよ」 「わざとらしい嘘だ」 そうやって惑わして楽しんでいる節がある。 前へ |次へ |
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