《MUMEI》 「…いい感じ」 「…っ…あっ……は」 左近さんは、確認するように、私の体に触れていった。 うずくまっていた私は、前に… 左近さんによりかかるような姿勢になった。 「うんうん。いい感じに薬が効いてるね」 右近さんが私の後ろから囁いた。 それだけで、私の体がビクビクと反応した。 (く…すり?) 吐息や甘い声しか出せなくなってきた私は、ぼんやりと、その言葉を聞いていた。 薄れゆく意識の中で、右近さんの説明が聞こえた…気がした。 「左近の水はただの水だよ。 君が飲んだのも、俺が飲んだのも、ただの、同じ水。 ただ…君の『コップ』にちょっと、『気持ち良くなる』薬を塗っておいただけ」 ―と。 それから後は… 何も、覚えていない。 前へ |次へ |
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