《MUMEI》

それから明良は、『当主以外の唯一の守護神』として、丁重に扱われた。

当時、明良は次期当主候補だった。

―五年後。

『当主の息子』で『直系』の神が、『剣』と一緒に生まれるまでは。

神の力が明良より強い事は、誰の目にも明らかだった。

それから更に五年後、十歳で目覚めた風の『守護神』の翔子が神の婚約者になり、明良の存在は、価値は、扱いは、下がっていった。
ゆきを手に入れようとしたのは、そんな背景があったからだった。

右近と左近の目覚めは、同時で、四年前…十六の時だった。

二人が来た時には

当主確定の、桁違いの力を持つ神

神の婚約者で神を愛する翔子

神に対抗意識を燃やす明良
が、いた。

右近と左近はその中で

『楽に生きよう』と決めた。

そんな二人にとって、ゆきは『面白そうな玩具』だった。

右近はどちらかと言えば翔子のように大人びた艶のある女性を好むが

左近は、ゆきのような小柄で可愛い少女を好む。

本人は自覚は無いが、ゆきは『美少女』だった。

だから右近は左近に協力した。

『面白そうだったから』

たった、それだけの理由で。

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