《MUMEI》

「それでも、一応変わるのか」

明良の言葉通り、『剣』は光と共に、姿を変えた。

「な…」

その姿に、右近はそう言ったきり、絶句した。

現れたのは…

黒髪・黒い瞳の

整った『顔立ち』の

『人型』の『男』だった。
その服装に、神だけは見覚えがあった。

卒業記念試合で来ていた学生が着ていた制服

つまり、ゆきの通っていた高校の制服を、その『剣』の分身は着ていた。

「まるで、『普通の人間』だな」

明良の言う通り、それは、この光景さえ見なければ、ただの『かっこいい学生』にしか見えなかった。

同じ『人型』でも、非現実的な色や服装の『姫』と、あまりに違う。

『当主』

『学生服の男』は、ゆきを抱き上げると、神に話しかけてきた。

「何だ」

『急激な目覚めにより、我が主は体力を消耗しております』

「みたいだな。…離れに連れていって世話をさせよう。

…こっちへ」

神は、ぐったりとしているゆきに近付いた。

その時のゆきの様子から、他にも何かあった事に神は気付いたが、神は興味がなかったので、それには触れなかった。

「…さっさとこっちへ渡せ」

『いいえ』

『学生服の男』はゆきを離さなかった。

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