《MUMEI》

『剣』の分身は、『守護神』以外には見えない。

このままの状態で離れに移動すれば、普通の人間には、ゆきは空中に浮いているように見える。

それを説明しても、『学生服の男』はゆきを離さなかった。

「仕方ない。…行くぞ。
お前達はもう寝ろ」

神はため息をついて、離れに向かった。

他の四人は、それを呆然と見送った。

「あんた達、やっぱり…」
翔子は明良や左近の様子から、三人がゆきに手を出そうとした事に気付いた。

三人は、昔翔子に同じ事をして、失敗していた。

ただし、怪我を負ったのは、明良と右近で、翔子に興味の無い左近は、右近に協力しただけだった。

三人は、気まずそうに、それぞれの部屋に戻っていった。

「まったく」

翔子はため息をつきながら、部屋に戻った。

そして

「本当に、『できそこない』、…よね?」

と、自分に言い聞かせるように呟いた。

もし、万が一。

ゆきの力が翔子より強ければ、ゆきが…

神の婚約者になる可能性がある。

最初に会った時から、翔子はそのことで、頭がいっぱいだった。

だから、ゆきの目に、翔子は『赤』に映っていたのだった。

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