《MUMEI》
加藤 惇
やっと高校も卒業した。
長かった…、学業と仕事の両立めっちゃきつかった。
仕事って言っても露出はかなり少なかった。
つか殆どレッスンばっかりの日々だったような…。
センスなんか無いくせに歌のレッスンやらダンスやらギターやら色々やらされる。
せめて裕斗位身長があれば雑誌やファッションショーの依頼も入ってこんな何でも屋なレッスンしなくても良いのに…。
隆志みたいに格好良ければオーディション受けずしてドラマだろうが映画だろうが…
「はあ…」
「何溜め息ついてんの、幸せが逃げていくよ?」
「幸せなお前に言われたくない!!つかここは裕斗の奢りな!」
「何カリカリしてんだよ、訳分かんねー」
裕斗は煙草を吹かしながら呆れた表情になる。
昼下がりの午後。
俺達のマンションの中間地点にある住宅街の小さなカフェで、コーヒーを飲むのが最近俺達の定番になっている。
最近誕生日を迎え20歳になった裕斗の腕には伊藤さんからのプレゼントのブルガリのホワイトゴールドの時計が光る。
つかこれ、金額聞いてぶったまげたね、本人もぶったまげたらしいけど。
俺なんか裕斗に頼んで買ってきてもらった300ドルのバッグが一番の高額な所持品。
別に誰かに何かを買って貰いたい訳じゃないけどこの差は一体…みたいな。
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