《MUMEI》
女が苦手
その晩、鈴木から電話がかかってきた。


「別れた・・・」


「・・・大丈夫?」



こういうとき・・・私はどうすべきなのか・・・


「ごはん・・・食べた?」


どうでもいいことを聞いてみる。


「・・・食欲ない」


こんな経験・・・私にはないから分からない・・・


「食べないと死ぬよ!!」


「死んでもいいかも・・・」


死んでもいいなんて。。。
そんなに・・・落ち込んでるんだ・・・


「・・・どうしよ、これから」


小さく泣きそうな声で鈴木がつぶやく・・・


「どうするって・・・、詩織さんはなんて言ってた?」


「もう、ついていけないって・・・」


まぁ、今までついていけたのが不思議なくらいだけどね。


「こんな風になるんだったら、もっと大切にすれば良かったのに」


私には当たり前のことしか言えない。


「あいつは・・・離れないし、ずっとそばにいるもんだと思ってた」


なんて都合のいいことを・・・
男は勝手だねぇ。


「浮気なんかするからよ」


少しの沈黙の後


「俺ずっと男子校だったし、女の子が苦手なんだ」


またまたご冗談を。


「二人っきりになると、何を話していいかわからなくなって沈黙ばっかり」


マジで!?
なんか、すっごい意外。


「それで、なんとなく雰囲気が良くなって・・・」


「手出すってこと?」


「うん」


はぁー?なんだそれ!?
言い訳になってないし。


「話すよりキスするほうが間がもつから・・・」


沈黙をキスで埋めるってか?


「さいてぇーーーっ!!!」


思わず電話越しに叫んでしまった。


「詩織さんは、あんたなんかと別れて正解かもね!!!」


きっと彼女も辛い思いをして決断したんだ。


「あんたが今までやってきたことが、そのまんま返ってきたんじゃない?この機会に自分を見つめなおすことね!!!」


鈴木は何も言わない。


「さよなら」



一人で言いたいだけ言って電話を切ってやった。

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