《MUMEI》

「まず、ケースを自転車の荷台に縛って!!」


『え〜!?重いよ、絶対持ち上げらんない!!」


「………」



さっきからこんな調子。



「…大丈夫だって!
ほら、体はおれなんだからさ!!」



なんだ、この励まし…



『……わかった』




蓬田の返事の後、電話越しに、
瓶の触れ合う『カチャン』と言う音がした。


それから蓬田の声。



『……全然重くなかったよ!!』



何か嬉しそうだな…



「よくやった!
んじゃ、配達ルートの説明な」


『…う、うん』



唾を呑む音が聞こえる。
そんな大事でもないっちゅーに…



「えっと、まずはー…前田さんとこ。
そっから右に、公園あるだろ??」


『…えーと…あ!!
―あれ!?ぞうさんの滑り台あるとこ??』


「おー!それそれ…」



見えるわけも無いのに、
おれもつい窓から身を乗り出してしまう…



…って、





―…窓から、その公園見えるんですけど…




は!?



「…なんでだ!?」

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