《MUMEI》

離れに着いた神は、起きていた使用人の女に声をかけた。

「これは神様。どうされました?」

女は深夜突然現れた当主に驚いていた。

「この娘の世話を頼む」

そう言って、神は後ろにいる『学生服の男』の腕の中にいるゆきを指差した。

女は、ゆきに近付き、様子を確認した。

ゆきはぐったりしたままだった。

女は神妙な顔付きで頷くと
「かしこまりました。
ところで、こちらの『学生さん』はどちら様ですか?」

と、神に質問してきた。

「何?」

珍しく無表情な神が表情を変えた。

その様子に驚きながらも女は質問を繰り返した。

すると

「私の事は、おかまいなく。それよりも、早く彼女を休ませたいので、案内をお願いします」

と、『学生服の男』が口を開いた。

それは、先ほどまでの、神の『姫』が話す時のような、『剣』の分身独特の威圧感のある声や、堅苦しい口調とは異なっていた。

まるで『普通の人間』の声のようだった。

「そうですか? では、こちらへ」

「ありがとうございます」
『学生服の男』の言葉に、女は反応した。

『では、失礼致します、当主』

再び元の口調に戻った『学生服の男』は、神に頭を下げ女に付いていった

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