《MUMEI》

女は大勢いる使用人の中の一人にすぎない。

『守護神』でもなければ

『御剣一族』ですらない。
「どういう事だ?」

『剣』の分身であるはずのものが、まるで『本物の人間』のように扱われている事に、神は困惑していた。
「『姫』」
『はい』


「一体、何だ、あれは」


『刃の無い剣』

『本物の人間のような分身』

あまりにも今までの『守護神』とは異なるその姿。


「『姫』」

普段は忠実に命令を守る『剣』の分身が何も答えないので、神はもう一度、問いかけたが、『姫』は無言のままだった。

「お前にも、わからないか」

『申し訳ありませぬ』


「いい。

…あいつとお前では、

どちらが強いんだろうな」

神の言葉は

『ゆきと自分ではどちらが強いか』と

同じ意味だった。


だから、『姫』は答えた。

『それは、主です』

―と。

神は、何も答えず、寝所に戻っていった。

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