《MUMEI》
寂しがり屋
コンビニでボルビックを二本買った。


そして近くの公園のベンチに腰をおろし、一本を鈴木に渡した。



「はい、これ、おごりだからね」


家ではだらしがなかったのに、鈴木はおとなしく渡された水を飲んだ。


外の空気にあたって少しは落ち着いたのかな・・・


そうやって様子を見ながら冗談ぽく声をかけてみた。


「生活荒れすぎ!」


鈴木は苦笑いした。


「あんなに堕落しちゃ駄目じゃん!!!」


相変わらず鈴木は苦笑い。


「辛いのは分かるけどさ・・・がんばろ!」


って言ったものの・・・
実は私、失恋なんてしたことないから分からないんだよね・・・




少しの沈黙の後、鈴木はポツリポツリと話し始めた。


「俺は女好きなわけじゃないんだ・・・。」


は?


「ただの寂しがり屋なだけなんだ・・・」


寂しがり屋ねぇ・・・


「詩織がいるから他の女の子にも声がかけれるんだ・・・」


意味が分からない・・・


「鎖に繋がれた犬みたいなもんだよ」


ますます分からない。


「鎖に繋がれてるから逃げようとするんだ。思いっきり飛んでも、鎖があるから限界があるだろ。それ以上飛ぶ心配がない」


「え?でも逃げようとしてるんでしょ?」


「限界を知ってるから飛ぶんだ。限界がなければ、どこまで飛んで行っちゃうか不安だから飛ばない」


鎖に繋がれた犬が飛ぶ姿は想像できるけど、意味が分からない・・・


「ごめん、あんたのこと全く理解できない…」


鈴木は笑いながら、


「だよな…俺の勝手な理論だし…結局、寂しいだけなんだ」


声は笑いながら、顔は寂しいままだった。


なんか鈴木ワールドがあるんだね・・・


もう少し、そっとしておこう…


「じゃ、そろそろ帰る。…テスト…、ちゃんと来てね」

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