《MUMEI》
それは変わらぬ波音と、3
「明日から夏休みなのよね。」
終業式が終わり、大掃除の時間。窓拭き係の俺と未央は手と口を動かしていた。
因みに薫と咲はここにはいない。あいつらは1組。俺らは2組。休み時間ならどちらかがもう一方に行くのだが、残念な事に大掃除は授業扱いである。
「だから俺らはこうして掃除してるんだが。」
「そうなんだけどさ〜。」
プシュ、と洗剤を窓にかける。
「何だか実感が沸かないっていうか・・・・・・明日が夏休みっていっても何か変わるわけじゃないじゃない。」
「学校は休みになるが。」
「そうだけど、あたしは部活で来るし。なんちゅーか、例年通りだなっ、と思ってさ。」
「一夏のアバンチュールでも期待してるのか?」
「そういうわけじゃないけ、どっ!」
高い所を拭こうと椅子の上でジャンプをした結果、未央はバランスを崩し椅子から落ちそうになる。が、なんとか支えてやることが出来た。
「小さいんだから無理すんな。高い所は俺が拭くから。」
「あっ、ありがとう・・・・・・」
珍しい事にしおらしくなりながら椅子から降りる。何時もだったら、小さいことを馬鹿にすんな!とでも言ってくるのにな。
「まっ、さっきのは冗談としてもお前なら誰かしら彼氏ぐらいつくれんだろ。」
「うん・・・・・・そうかもね・・・・・・」
窓の外を拭くためにカラカラと窓を開ける。
外は暑く、蝉の煩さが飛び込んでくる。
だから、未央が小声で呟いた事には気付かなかった
「でもね、それは無理なんだよ。」

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