《MUMEI》
銀色の男(ひと)
『主…』

その声を聞いた時、私は、いつもの夢だと思っていた。

だから。

ゆっくりと目を開けた私の視界に

その声の持ち主が入ってきて、驚いた。

「だ…れ?」

『やっと…お会いできました。

我が主』

嬉しそうに、私と同い年くらいの『男の人』は、微笑んだ。

…何故か、私が卒業した高校の制服を着ている。

(それに…)

私は、まじまじとその『男の人』を見つめた。

『肌色』の『肌』に

『銀色』の『髪と瞳』

神君の、『姫』よりも、弱々しい薄い『銀色』の光を、その人は身にまとっていた。

『お許しください、主。

ケダモノ共から主の体を守る為とはいえ、御無理をさせてしまいました』

『銀色の男』はそう言って、私に深々と頭を下げた。
『ケダモノ共』

(そうだ、私…)

私は、明良さんに襲われ

逃げようとしたところを右近さんと左近さんに捕まって…

そこから、私の記憶は途切れていた。

『主の清らかなる体は、私がお守り致しましたので、御安心を』

震える私に、『銀色の男』が優しく声をかけてきた。
(待って…)

さっきから、『銀色の男』が私を『主』と呼ぶ事に、私はようやく気付いた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫