《MUMEI》

「はあ…」





病院に見舞いに通う裕斗は二人分の会計を済ませ店を出て行ってしまった。





俺は残りの氷で薄まったコーヒーをちびちび飲む。




パフェは美味かった




また食いたい。





レッスンは夜から、今日の日中はオフっていうよか仕事無くて暇だ。



布団でも干そうかとか、今日は豚肉が安い火曜日だとか情けなくも与儀る。




「はぁー」



「何溜め息ついてんの、幸せが逃げてくよ?」




「あーもうそれ聞き飽き…、うわっ、内藤!びっくりしたっ!」




「そんなびっくりすんなよー!
窓から加藤見えたからさ、座って良い?」


「…うん」
内藤はアイスコーヒーを注文、俺も付き合っておかわりをした。






内藤逸樹、高校時代のクラスメートだ。




奴は男だけの某有名事務所でアイドルしている。





俺と同じく小柄で、だけど格好良い。





「こんな時間に人気アイドルが何の用だ」



「その言い方なんかムカつくなー!今日はオフだよ、これからオモサン(表参道)行くんだよー」


「…そう、あ、この辺に住んでるの?」
「おい〜、前に話たじゃんかよ〜!ご近所さんだね〜って!」


「そうだっけか?
記憶の片隅にもない」



だいたいコイツに興味ないもん。



あーきっと今の話明日には忘れてる…。
「なー加藤、俺加藤に言いたかった事あるんだけど…」



「ん?何」




俺は視線をふとコーヒーから内藤に移す。






するとなぜか内藤は、真っ赤な顔で唇を震わせていた。

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