《MUMEI》
紫の光
(それしても…)

パジャマから洋服に着替えた私は、目の前の光景に、首を傾げた。

さっきは晶の事で気にならなかったが…

「何かしら、これ?」

部屋のところどころに、『紫』の光が見えた。

それは点のようだったり、ぼんやりと人のようにも…見えた。

私は、部屋の外にいる晶に声をかけ、質問してみた。
『紫』の意味が、私にはわからなかった。

それに、私は『人間の色』だけが見えるはずだった。
中に入ってきた晶は即答した。

『あれは、『かつて人だったもの』です』

―と。

(それって…)

「『幽霊』ってこと?」

『そうとも言います。
既に、人としての記憶は無くしており、『悲しみ』と『怒り』のみとなっておりますが』

恐る恐る確認する私に、晶は更に説明した。

『悲しみ』の『青』と、『怒り』の『赤』…のみの、存在。

二つの色が混ざり合っているから

だから

『紫』

私は、不思議と納得した。
幽霊は、いわゆるこの世に未練を残した存在だから。
明るい色のはずは無いと思った。

(あれ?)

もう一つの負の感情の色。
『黒』の存在が無い事に、私は気付いた。

悪意と殺意と、恨みの『黒』

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