《MUMEI》

そう言って、晶が指差したのは

カタログのモデルがはめていた

「眼鏡?」

だった。

確かに、テレビのように、レンズ越しに見ると、『色』は薄れた。

「眼鏡がどうした?」

神君が訊いてきたので、私は『ダテ眼鏡』が欲しいと頼んだ。

理由を訊かれて悩んだ私は
『気分転換と、オシャレの為』

と、苦しい言い訳をした。
我ながら、突然だと思ったが

「お前も、翔子と同じだな」



妙に納得されてしまった。
そして

「好きなのを頼め。
明日は寝坊するなよ。ここに、六時だ」

と言って、『姫』と一緒に座敷を出ていった。

私が、お膳を片付けに来てくれた使用人の女の人に神君とのやりとりを伝えると
「翔子様はとにかく気まぐれに、たくさん頼まれるのですよ」

と、こっそり教えてくれた。

つまり、私の申し出も

神君には

『女の気まぐれ』

だったらしい。

(まぁ、いいか)

変に追求されるよりは、ずっといい。

頼んだ眼鏡は、明日には届くらしい。

安心した私は、使用人の女の人に『守護神』の屋敷の前まで案内してもらい、晶と一緒に自分の部屋に戻った。

昼食が中途半端だったので、夕食は必要無いと伝えておいた。

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