《MUMEI》

そして、日は暮れ、夜になった。

「お風呂入ってきてもいい?」

そう言う私に

『では、お背中を…』

と、立ち上がりながら晶が言い出した。

「いいから、待ってて!」
私が慌てて言うと、晶はその場に正座した。

(何だか)

『待て』と言われた犬みたいだった。

「『栄養』って、お風呂の後でも大丈夫?」

『はい』

私は、晶の言葉に安心して、風呂場に入っていった。
三日間も眠り続けていた私は、当然、入浴もできていなかった。

だから、とにかく早くお風呂に入りたかったのだ。

それでも、『栄養』不足な様子の晶が心配だった私は、早目に入浴を済ませた。
「ごめんね、お待たせ」

『いいえ』

パジャマに着替えた私は、正座する晶の目の前に座った。

ドライヤーもかけていない私の髪は、まだ濡れていた。

「…で、『栄養』ってどうしたらいい?」

『では、あちらへ』

晶は、…何故か布団を指差した。

何となく…嫌な予感がした。

「…『栄養』よね?」

『はい』

私は、恐る恐る布団に移動した。

私の向かい側に、晶は座った。

「どう、…するの?」

『目を、閉じて下さい』

私は、晶を見つめた。

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