《MUMEI》

なんで椎名くんがここに現れたのかは、
配達しながら説明してくれることになった。


初め、『おれの仕事だから』と
椎名くんが自転車を押そうとしてくれたけど、

体は私。重すぎてよろけてしまったので、
結局私が自転車を押すことになった。


―…全然、重くない。


やっぱり男の子、なんだなあ…



そんなことを思っていると、



「…悪いな」



椎名くんが、小さく呟いた。



「…え??何が??」



問い返すと、



「おれの仕事、押し付けちまって―…」



椎名くんは、そう言うと俯いてしまった。



「…そんなの、仕方ないじゃん!!
―…その代わり私も、ゴジラの散歩お願いしていい??」



私がそう言って笑うと、



「…おう」



と、椎名くんも笑った。



「…で、まずはどこに行けばいい??」


「そこの角、右に。
公園が見えるだろ―…??」



―…配達コース、覚えなきゃ!!

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