《MUMEI》 配達 〈おれ〉1回も駅で会ってないとか、逆にすげえ。 なんか面白くなって、 好奇心で蓬田に放課後何してんのか訊くと、 「えっと…友達と、喋ってる、かな…??」 と、はっきりしない返事が返ってきた。 …でもまあ、部活入ってなかったら 放課後だべってんのは普通か。 「…あ、ストップ」 おれの声に、蓬田が自転車を止める。 「―…ここ、前田さんち!!」 …あぶねー。ぼけっとしてたから、見落とすとこだった。 前田さんちは小さな居酒屋で、 一昨年、だんなさんを亡くしてから、 今ではおばさん一人で切り盛りしてる。 おばちゃんは丁度、庭掃除をしてるとこで、 おれたちに気付くとこっちに歩み寄ってきた。 「…あら、みつるちゃん!!!」 ―…おしゃべり好きで、すっげー明るいおばちゃん。 「みつるちゃん!!あんた事故にあったって聞いたけど―… あら!?そっちの可愛らしい子は!? …もしかして―…みつるちゃんのコレかい??」 おばちゃんは一気にそこまで言うと、小指を立てて、 意味深な笑みを向けた。 …おばちゃん… 『そっちの可愛らしい子』は、おれなんです… 蓬田は、おばちゃんの気迫に押されてたじろいでいる。 「…お…あたしは、椎名くんのクラスメイトで、蓬田といいます。 あと、事故は大したことないですので!」 おれが代わりに答えると、 蓬田は何度も大きく頷いた。 前へ |次へ |
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