《MUMEI》
貧血
翌朝。

「ん…」

『おはようございます、主』

目を覚ました私の視界に、晶の顔が見えた。

(…眩しい)

晶の『銀』は、今までと違い、キラキラと輝いていた。

私達は、あれから、同じ布団で眠った。

もちろん、二人共、服は着ている。

一緒に『寝ただけ』だ。

『栄養』を与えても、晶が離れなかったので、理由を訊くと―

『主の側にいるだけで、得られる『気』も、わずかにありますので』

と言われたからだ。

ちなみに、それは、生きる気と書いて『生気(せいき)』と言うらしい。

更に、『人型』以外の『剣』の分身には、その生気だけで十分らしい。

(私もそっちが良かったな)
心から、そう思う。

私はゆっくりと立ち上がった。

(やっぱり、クラクラするな…)

『大丈夫ですか?』

よろけた私の体を晶が支えた。

「…平気。
顔洗って着替えてくるから、晶はここにいて」

『はい』

私の言葉に、晶は素直に従った。

私はゆっくりと着替を持って、風呂場の横の洗面所に向かった。

不思議な事に、部屋と洗面所の間に、昨日まで無かった障子の戸が『できて』いた。

それまでは、トイレの戸と、洗面所から風呂場への戸しかなかった。

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