《MUMEI》

これも、この異空間が成せる業なのかと、感心した。
蛇口の無い洗面所の洗面器には、洗顔用の水。

コップには、歯磨き用の水が入っていた。

ちなみに、トイレも絶妙のタイミングで水が流れる。
お風呂にシャワーが無いのと、洗濯機が無いことだけが、難点ではあるが…

元々施設で集団生活に慣れていた私は、それほど不便だとは感じなかった。

それから、ドライヤーはどうやら必要無いらしく、自然乾燥でも問題無い事に、鏡を見て気付いた。

そもそも、ここには電源プラグがない。

だから、家電も存在しなかった。

「…ふう」

洗顔と歯磨きを終えた私は、もう一度鏡で自分の姿を確認した。

「やっぱり、目立つなぁ」
私の首筋には、

昨日晶が

『噛みついた』

『跡』



くっきりと残っていた。

『痛い方』の『栄養』

それは、私の

『主の生き血』

だった。

実際、噛みつかれた時は、チクッとしたが

それより、吸われている時の奇妙な感覚に、私は戸惑った。

何となく

晶の

舌が入ってきたあの時と

同じように、ゾクゾクしたから。

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