《MUMEI》

「マスオさん!こ…これは!」


「…………。」

予定が狂った。



「んんーッ!んー!」

押入れの中では、猿ぐつわを噛まされ、半狂乱になっている波平がいた。

荒縄が体中に食い込んで、痛々しく流血している。どうやら押入れの中でひどく暴れたらしい…。

密閉された空間で、長年連れ添った伴侶が冷たくなってゆく様を肌で感じたのだ。

僕には、その辛さが痛いほど解った………。

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