《MUMEI》

『ユキチャン、オネガイ、アル。ダカラ、エンキタ』
『水モ、来タ』

「お願いって…」

(まさか)

二匹が、声を揃えた。

『モット、チョウダイ』

―と。

「ちょ、ちょっと」

そして、二匹が私の服の中に入ろうとした時。

「やっぱり、ここか、炎」
「…」

二匹の主の明良さんと左近さんが現れた。

「主を置いて行くなんて、よっぽどおいしかったんだね。

…ゆきちゃんの、精気」

それから、陸を連れた右近さんに

「朝から何、下品な会話をしてるの?

そろそろ、神に言われた時間でしょう?

行くわよ」

疾風を連れた翔子さんが現れた。

『…お返しします』

晶は、炎と水を私から引き離すと、明良さんと左近さんに手渡した。

「どうも。 …だめだぞ、炎」

叱られた炎は

『ドシテ? アルジ ユキチャンモットホシイ イッテタ』

と、瞬きをした。

『駄目! ユキチャン、主ノ!』

水が叫んだ。

左近さんは、否定も肯定もしなかった。

『主は、渡しません』

「何? お前のものだって?」

右近さんが晶を見つめた。
「お前の『栄養』、ゆきちゃんの精気だろう?」

「違います!」

「へ? だって…」

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