《MUMEI》

「お披露目は中止だ」

食事用のお座敷に到着した私に、先に来ていた神君が告げた。

「やっぱり、できそこないだから?」

翔子さんが、神君の横に並んだ。

「…まだ、何の『守護神』かわからないし、『役目を放棄した守護神の娘』だからというのが、母上のご意見だ」

「え…?」

『役目を放棄した守護神の娘』

「何?ゆきちゃんの父親って『守護神』だったわけ?」

「初めて聞いたよ、そんな話」

「…」

「じゃあ、親子揃ってできそこないね」

神君の言葉に反応する四人を、私はただボンヤリと眺めていた。

突然そんな事言われても、実感がわかなかった。

私は…父の顔も知らなかったし。

「何故役目を放棄したかは知らないが、力自体はお前より上だったらしいぞ、翔子」

「じゃあ、風だったの?」
「そうだ」

風の『守護神』だった、父。

「姿を消す前は、母上ではなく、その男が当主候補だったらしいからな」

当主候補だった、父。

「へぇ、だったら、ゆきちゃんの力の方がお前より上かもな」

「そんなわけ無いでしょ!」

明良さんの言葉を、翔子さんがすぐに否定した。

(そうよ、そんな事、無い)
私も、そう思った。

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