《MUMEI》

「おい、お前、ふざけてるのか?」

「え…?」

悩んだ末に

私が握り締めたのは

『黒』の色鉛筆だった。

(あぁ、そうか)

「ごめんなさい。…間違えました」

私は、『黒』の色鉛筆を元に戻した。

集中した私が見えたのは…
たくさんの黒点だったのだが

それは、『生きている人間』の『悪意』で

神君や、他の『守護神』には見えない色だった。

(と言うことは…)

次に見えた『紫』も、塗ることは出来ない。

私は、とりあえず、赤い色鉛筆を握り締めた。

すると

『お手伝いします、主』

晶が、そっと手を重ねてきた。

「ありがとう」

私は、目を閉じ、集中した。

(赤…火…火の、気配)

そして、ようやく、一番強く感じた場所を見つけ、丸印を付けた。

「やっと、一つか」

「すみません」

『最初は皆、そうだから、気に病む事は無いぞ。

…主は特別だからな』

『姫』が誇らしげに言った。

一応、慰めてくれているらしい。

私は、赤の色鉛筆を置いた。

次は、青だ。

それから、私は、

白と茶も、丸印を一つずつ付けた。

「…できました」

やっと仕上げた日本地図を、私は神君に渡した。

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