《MUMEI》 椎名くんとは、お店の前で別れた。 ゴジラと別れるのが辛くて名残惜しかったけど、 椎名くんは『また連れてくる』って、約束してくれた。 店の扉を開けると、 「お疲れー、今日は遅かったねぇ」 と、椎名ママが伝票に目を通しながら言った。 「た、ただいま!! わ…おれも、手伝いま…手伝おっか??」 しどろもどろになりながら私がそう言うと、 「あ??いーよいーよ、珍しくて気持ち悪い。 …それより、なんでこんな時間掛かったの??」 椎名ママが顔を上げて訊いてきた。 「あっ、えーと… 蓬田さんと、一緒に…行くことになって―…」 そう答えると、 「なんだって!?」 椎名ママの目つきが鋭くなった。 ど、どうしよう…!! 怒られる…っ! 「どうだった!?」 「……へ??」 「へ?…じゃ、ないよ!! チューの一つでもしたんでしょ??」 「……なッ!!!」 固まった私を気にする風も無く、椎名ママは さすがあたしの息子だわあ、と呟きながら、 機嫌よさそうに伝票をめくり始めた。 「あの、ち、違っ…!!!」 「恥ずかしがってんじゃないの!! ホント、あんたは空手ばっかりで… 心配だったのよ、あたしも。あー安心した!!」 「!!だから違…!!!」 「彼女の一人もできないんじゃ、男がすたるからね!! …風呂、入っといで〜」 「…はい」 …だめだ。 完璧、誤解されてる。 ―…お風呂に向かう途中で、もう一度言ってみる。 「ほんとに、違いますからね―!!」 「はいはい。…『チューまで』は、行ってないんでしょ、分かったから!!」 「………」 もー、どうでもいーや… 前へ |次へ |
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