《MUMEI》

加藤の背中…。





小さくて細くて抱きしめたい。




柔らかそうな髪、





触れて撫でてみたい。




「視線が痛いんだけど」



シューズを履き終えた加藤は振り返った。




玄関の段差のせいで身長差が頭一つに広がっている。





俺はギリギリ170センチだから加藤の事は少ししか見下ろせない。



ちょっと理想の差になってドキッとしてしまう。




「しょうがないな、…一回だけだよ?」



「……!!」



…あ



あったか…い…



って!!





唇が!!



唇が重なってる!!




トン…とシューズが床になる音がする。




爪先立ちでキスをしてくれたんだと教えてくれた様に。





加藤は玄関を開けた。




少しだけ風が入ってきた。





「な、加藤…、今の……」




「何キス位で呆けてんだか…、ほら出なさい!」



「は、はい!」






ドキドキしながら加藤の後ろをついて行く。




「オモサンは?」



「ムリ、加藤の傍にいたい」



「あっそ、じゃー砂糖特売で一人一点だから付き合え」




「うん、加藤は砂糖が大好物なんだな?」

「アホか!はったおすぞ!!」




「はったおす…いーなあ…はったおされて〜!!」

ガシッ!!




「う゛っ!!」




ベンケイの泣きどころに鋭い蹴りが一発!



余りの痛さに俺は蹲る。


「加藤〜!」



「気持ちよかった?」



ニッコリ笑いながら俺を見下ろしている。

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