《MUMEI》

「それで、肝心の刃はどうなのです?」

「まだ、確認はできていません」

「では、しばらくそのまま様子を見なさい。

…決して、目を離さないように」

「はい」

神楽の言葉の裏には、ゆきが、父親のように役目を放棄しないよう、見張れと言う意味が隠されていた。

ゆきの父親は、風の『守護神』で

非常に力が強く

一族から尊敬され

当主にふさわしい人物だったと、当時を知る者は、皆、口を揃えて言う。

それが、ある日突然、風と共に姿を消した。

理由はわからないが、ゆきという子供がいる以上、ゆきの母親が、その失踪に絡んでいると神は思っていた。

「…母上」

「何ですか?」

「あの娘の、母親とは、どのような人物なのです?」

それは、神が疑問に思っていた事だった。

神は、御剣の『直系』で『守護神』という立場が

どれほど自由が無いか嫌と言うほど知っていた。

その立場の者が、御剣一族以外と、知り合うとは思えない。

しかし、同じ一族であれば、わざわざ失踪…『駆け落ち』する必要も無いはずだ。

「あなたが、知る必要はありません」

神楽は『知らない』とは言わなかった。

『それ以上詮索するな』

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