《MUMEI》

覚悟を決めて、一口。


う…っ



甘…!!!



必死で1個を食べきった。



「どうしたの??涙目になって…」



蓬田ママが心配そうに訊いてきた。



「…いや、おいしすぎて…」


「そう!?もう1個食べる!?」


蓬田ママの提案に、慌ててかぶりを振る。



「いや!!太るから…
…あの、それより…」


「なに??」



「…これ、明日…
よも…椎名、くんに持ってってもいいですか??」



…この菓子は、蓬田が食べてやるべきだ。

蓬田のために、心込めて作ってくれたんだから…



「…いいわよ!!いくらでも持っていきなさい!!
…椎名くん、お菓子好きなの!?」


「…大好きみたいで」

…嘘ですが…



「そうなの!!そういえば、甘味屋のお菓子、すごく喜んでたわ。
じゃあ、ママが包んであげるから☆」


「あ、ありがとうございます!」



それにしてもねぇ、と蓬田ママが呟く。



「やっぱり、タイプは似るのねえ」


「…はい??」


「椎名くん!!パパの若い頃にそっくり!!
…西城センパイって人は、かなめ、見せてくれなかったもんね〜」



…おれが、蓬田の父ちゃんの若い頃にそっくり??


てか、その父ちゃんはどこにいんだ??



「あの〜…」



菓子を包む蓬田ママに訊ねてみる。



「なぁに??」


「あの、パ、パパは…??」


「…今日も遅くまでお仕事よ〜」


「…そっか…」



まだ一回も会ってないな。

…いつもこうなんだろーか??



「…まったくね、退院祝いくらい早く帰ってくればいーのに…」



そう言った椎名ママの声は、
すこし寂しそうに聞こえた。

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