《MUMEI》

抱きしめてそのままキスに持ち込む。

「…………あ。学校」

舌が入る前に綴喜はずり下がる。
鼻にベロが当たった。

「何?」

「やっぱり行こう。借りたい本あったんだ。」

完璧、主導権は綴喜側にある。
こっちの気も彼には知ったことではないのだ。

「そんなの、いつだっていいじゃんか。」

ここでお預けは圧政だ。

「そうはいかない。来週までの提出課題に必要だからさ。
早く終わらせて来週明けとかないと先輩達に会えないだろう?」

来週に元放送部員で集まるのは決定事項なのか……。

「いや、まだ会えるかさえ分からないし。」

そんな言葉じゃ鞄やらを支度する手を止められなかった。

「俺が好きなんだろう?だったら会う約束付けることくらい訳無いよな?」

くぅっ……、その笑顔に何度負けたことだろう。



「キス……今してくれたらいいよ。」

エネルギーチャージだ。

「30分のバスで行くから今からきっちり3分ね。」

時計を見ながらキスってどうなんだろうか……


俺は綴喜に主導権を明け渡してからは恋の下僕だ。


これ、即ち惚れた弱み……









――佐藤と藤田編 終――

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