《MUMEI》
桜吹雪
「『こちら』の桜も見事ですね」

神楽は、庭を眺めながら、『この家の当主』に話しかけた。

「急にいらっしゃるので、驚きました。
そちらで、何か?」

「いいえ。引退した身で、時間があったものですから。

…こちらの桜が見たくなったのです」

神楽は、そう言って、また桜を見つめた。

その時。

春風が、桜を揺らした。

「見事な桜吹雪ですこと」
「本当に。まるで、雪のようですね。

『あの娘』は、今、どこにいるかしら?」

『この家の当主』は、舞い落ちる桜の、一枚の花びらを掴んだ。

「さぁ、それは…」

神楽は、桜吹雪を見つめていた。

「会いたいわ…早く」

『この家の当主』は、小声で呟いた。

神楽は、それを

『聞こえないふり』をして
翌日。

御剣家に帰っていった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫