《MUMEI》 桜吹雪「『こちら』の桜も見事ですね」 神楽は、庭を眺めながら、『この家の当主』に話しかけた。 「急にいらっしゃるので、驚きました。 そちらで、何か?」 「いいえ。引退した身で、時間があったものですから。 …こちらの桜が見たくなったのです」 神楽は、そう言って、また桜を見つめた。 その時。 春風が、桜を揺らした。 「見事な桜吹雪ですこと」 「本当に。まるで、雪のようですね。 『あの娘』は、今、どこにいるかしら?」 『この家の当主』は、舞い落ちる桜の、一枚の花びらを掴んだ。 「さぁ、それは…」 神楽は、桜吹雪を見つめていた。 「会いたいわ…早く」 『この家の当主』は、小声で呟いた。 神楽は、それを 『聞こえないふり』をして 翌日。 御剣家に帰っていった。 前へ |次へ |
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