《MUMEI》
北と南
それから数日が過ぎたが、相変わらず私の出番は無く、私は比較的穏やかな日々を送っていた。

神君を除いた三人の男の『守護神』達は、露骨に迫ってくる時があったけれど

晶が助けてくれるから、私の貞操は無事だった。

出番が無いから、晶の栄養も、首筋の生き血と『生気』だけで足りていたし。

密かに、こんな毎日が続けばいいなんて、思い始めていた。

しかし

そんな私の甘い期待を裏切る出来事が

ついに

起こってしまった。

それは、いつも通り朝食を終えて

色鉛筆で、日本地図に印をつけていた時。

「…どうしよう」

珍しく、翔子さんが頭を抱えていた。

「どうした」

すぐに、神君が、翔子さんの側に来た。

他の三人も、集まってきたので、一応、私と晶もそこに加わった。

「…これ」

翔子さんが、二つの印を指差した。

それは両方とも

『守護神』が向かうべき

大きさだった。

問題は、その位置にあった。

「お前でも、無理か」

神君の言葉に、翔子さんは頷き

「北と南は、遠すぎるわ」
と言った。

その言葉通り、印は北海道と、沖縄の小島に付いていた。

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