《MUMEI》
最悪のシナリオ
「もし、本当にあの刑事が俺らの事覚えてたんなら、どうして知らない振りをすると思う?」


司の質問に他の三人は首を傾げる。


「それにだ、いくら立入禁止区域に入ったからって、あれはちょっと怒り過ぎじゃないか?」

「あぁ、確かにあれは怖かった…俺、般若の面被ってるかと思ったもん。」

「だね。それに私、あの刑事さん何か焦ってる気がしたんだけど…。」

「美樹も?私もそう感じた。」

「だったらもう一つの疑問。何故、刑事は焦っていたのか?」





司は三人の様子を伺い、もう発言する者がいないのを確認すると、自分の考えを述べた。


「これはあくまで俺の想像だけど、あの刑事はアパートの事件について何か知ってるんじゃないかと思う。」
「そりゃ昔と言っても、たかが十年前の事件だろ。あの刑事がその捜索に加わっていても、おかしくないんじゃね?」

「捜索ならな。でもそうじゃない。俺が言いたいのは、あの刑事自身が、事件に何らかのかたちで関与してるんじゃないかって事だ。」

「そんなまさか…。」


洋平は信じられないといった感じで司を見る。


「いや、俺も初めは考え過ぎだと思ってたさ。
でも、刑事が俺らの事を知らないと言ったり、焦る理由を考えてみると、やっぱりそう考えるのが自然と思わないか?」




それは四人にとって、一番最悪のシナリオだった。

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