《MUMEI》

「あ……よかった。」

たまたま、落ちた所に荷物が放られていたお陰で無傷のまま助かった。
昔から運がいい。

安心して七生に抱き着く。

「はなせバカ!」

七生は動揺すると逃げる癖があった。

「まって!!」


そして、七生は運も良ければ悪くもあった。

「ななおくーん!!……あっ!」

俺も決して運が良くなかったので、期待通りに窪みに落ちた。

それはもう、鮮やかに。

俺も七生も足を挫いてしまい動けない。
そのくせ、七生は意地になって自分の落ち度を認めなかったし、七生の堂々たる姿を見ているとなんとかなると根拠のない自信があった。

木に上りたいがため二人荷物や上着を置いていってしまい、雨で体温も奪われてゆく。

「へっくし」

「ななおくん、さむいの?」

そろそろと近付いて隣に寄り添う。

「ちがう」

意地になっている。

「そうだ、アメたべる?」

「……たべる。」

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