《MUMEI》

寄り添って寒さを凌ぎ、一時間もしないで発見された。
軽い、遭難体験だった。

それから、七生が同じ目線に立ってくれたんだ。



「俺が飴持ち始めたのは七生があまりにひもじそうだったからだよ。」

空腹を紛らわす為に七生がずっと俺の指しゃぶってたから……


「……ふーん?
あ、今のと違う味の飴が食べたい。」

当事者は覚えていないようだが、
どんな理由にせよ、初めて俺が七生を満たしてやりたくなったのだ。

「蜜柑でいい?」

口を開ける七生にかいがいしく食べさせる。

「あー……」

大口で指まで喰らう。
綺麗な歯並びだ。

「満足?」

舌がチロチロ爪を辿る。
少なくとも、以前よりは俺は七生のことを満たしている。



「……もっと欲すぃー……」

……筈なのに、足りてないようだ。

そういう果ての無いものに燃えてしまう傾向らしい。








――――二郎と飴ちゃん終

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