《MUMEI》

ここからだったら、駅までは走って5分強ってとこか。


でも、電車は6:45発。


ってか、蓬田も何でわざわざ早い電車で行くんだ??


次のでも間に合うのに…



とにかくおれは、全力疾走した。



そして、駅に着いた途端、
発車ベルが鳴り始めた。



「―ス、ストップ!!乗りますのります!!!」



車掌さんが気付いてくれたみたいで、
ドアを閉めるのを待ってくれた。


おれが駆け込むと、
ドアが閉まって電車は出発した。



「…セーッフ…!!」



ふっふっふ…
どうだ、入れ替わってもなお健在のおれの脚力。


はあはあと肩で息をしながら座席を探す。


…って、なんかみんなこっち見てる…


おいそこ、笑ってんじゃねえ!!


目の前の座席に座ったカップルを睨みつける。


と、



「し、椎名くん、ちょっと…!!」



小声で呼ばれた。


振り返ると、



「…あ、蓬田。オハヨー」



顔を真っ赤にした『おれ』がいた。



「オハヨー、じゃないでしょ!!
髪もぐしゃぐしゃじゃない!!…寝坊したの??」


「いやぁ、まあ…」



愛想笑いをしながら頭をかく。



「…もー…あっち空いてるよ、行こ」



呆れたように言うと、蓬田はおれを引っ張って歩き出した。



…明日は、寝坊しないようにしねーとな…

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