《MUMEI》

「し、椎名くん、ちょっと…!!」



笑っているカップルを睨みつける椎名くんに
小さく声を掛けると、
椎名くんは驚いたように振り向いて、



「…あ、蓬田。オハヨー」



と、事もなげに挨拶してきた。



「オハヨー、じゃないでしょ!!
髪もぐしゃぐしゃじゃない!!…寝坊したの??」


「いやぁ、まあ…」



椎名くんは愛想笑いをしながら頭をかいた。



「…もー…あっち空いてるよ、行こ」



なんだか怒る気も失せてしまって、
私は椎名くんの腕をとると、
空いている席へと引っ張っていった。

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