《MUMEI》

素早い一連の動作に私は一瞬慌てたが、私は、その動きに覚えがあった。

(そうか…)

きっと、今日は首筋では足りないから、胸から血を吸うのだと。

「晶…」

『はい、主』

晶は相変わらず首筋から唇を離さない。

何か、おかしい。

「恥ずかしいから、…早く…済ませて。

その… 吸って?」

私は、真っ赤になりながら、震える声で晶に頼んだ。
『わかりました』

晶はやっと首筋から唇を離した。

そして、今度はその唇をゆっくりと、胸までずらしていく。

晶の唇は、私の肌を離れなかった。

「…っ…」

やっぱり、おかしい。

初めての時は、晶はもっと事務的に、すぐに胸から血を吸った。

こんなのは…

違う。

心臓は壊れそうにドキドキしているし、体も震えるし、何だか…熱い。

まるで、あの時の

右近さんに変な薬を飲まされた時のような、変な感覚に、私は戸惑っていた。

晶の唇が、やっと、目的地に到達した。

私は、息が変に上がっていた。

(やっと、終わる)

後は、晶がそこから血を吸うだけだった。

しかし、晶の唇は、心臓の上を更に通過した。

「…っ? …しょ…、そこ、…違っ…あ…」

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