《MUMEI》
右手に潜む神
晶の指が、私の中に入ろうとした時。

『待てと言うに。若造が』

(?)

私の口が、勝手に開いた。
声も、違う。

それは、しゃがれた、老人のような男の声だった。

『…主?』

『良いから、とっとと姫から退け、…重い。

悪いな、姫。ちと、体を借りるぞ』

(体って)

次の瞬間。

私は、私を見つめていた。
「ここ、どこ?」

『姫の心の中じゃ。ちと、用が済むまでそこにおれよ』

そう言った私の瞳の色は

『金色』だった。

『誰だ、お前?』

『いいから、さっさと退け。 二度も言わせるな』

『金色』の私はそう言うと、右手で晶の体を押した。
『な゛?!』

「晶?!」

晶の体が、感電したように、痙攣した。

『言うことを聞かぬからじゃ。

とっとと服を着ろ。

見苦しい』

『お、前は…』

呆然とする晶に、金の瞳の私が告げた。

『我は、鳴神(なるかみ)
我が主は、姫の父上・神尉(かむい)様じゃ』

「父上?」

『そうじゃ、姫』

身支度を整えながら、金の瞳の私は頷いた。

確か、私の父は

『主の父は、風の『守護神』です』

私から離れ、服を着た晶が、私―鳴神に向かって言った。

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