《MUMEI》

『姫が契るのは、姫が二十歳を過ぎてから。

相手は、姫を生涯守ると誓う人間のみ

これは、神尉様の御遺志じゃ!

人外の小僧など、言語同断じゃ!』

(でも…)

『私が回復しないと、主が困るのです』

『知っておる』

鳴神は、私の右手にいて、全て見ていたと言った。

『じゃからな

我を、…喰らえ』

鳴神は、そう、続けた。

『喰らう、とは?』

『我の力を、小僧、貴様にやろう。

…しばらくは、姫の精気も必要なくなる』

「でも…」

それでは、鳴神は…

『我の事は案ずるな。
このままでは、どうせ、我は姫の中で消える。

最期に、姫の役に立ちたいのじゃ。

良いな、小僧』

『承知いたしました』

晶が、鳴神の向かいに座った。

「待って。どうやって、…」

『済まぬな、姫。
神尉様も、姫は、接吻までなら良いと申しておったからな』

そして、鳴神―金の瞳の私は、目を閉じ

晶が、自分の唇と

私の唇を重ねた…

「ん…」

目を開けた、私は、元の私だった。

私は、目の前の晶を見つめた。

「どうなった、の?」

『…主。 主の父上は、素晴らしきお方でした』

晶の体は今まで以上に輝いていた。

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