《MUMEI》
桜色
「また随分な裏技を使ったな」

私の部屋に来て、説明を聞いた神君が、ため息をついた。

『少なくとも、五年は持つぞ、これは』

『姫』が晶を見つめた。

「で、男として、お前は平気なのか?」

『私は人ではありませんから』

「そうか。…お前は、どうだ?」

「ど、どうって…」

私は、返事に困った。

『当主。主は、未だ男を知りません』

「晶!」

私が真っ赤になると、神君が天然記念物でも見るような目で、私を見つめた。

「おかしな女だな、お前は」

そう言って、神君は笑った。

「初めて見た時も、変わっているとは思ったがな」

「え?」

「お前は、俺には目もくれず、女友達の応援をしていた。

お前だけだったぞ、そんな女は

翔子も、他の女も、俺が望めば何でもする。

…お前は、どうなんだろうな?」

「それは、皆神君が好きだからでしょう?」

翔子さんも、あの場にいたほとんどの女の子達も皆『桃色』だった。

「俺の、姿が好きらしい。
…お前は、どうだ?」

「…」

私は…

よくわからなかった。

相変わらず、神君の顔は見えないし。

「どうした?」

気が付くと、神君が私の顔覗き込んでいた。

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