《MUMEI》

「…よく、わからない」

私は思い切って、正直な感想を述べた。

『主の美しき姿を目の前に…
本当に変わった小娘じゃ』
「すみません」

呆れ顔の『姫』に、私は謝った。

『謝るなら、主に謝れ』

「必要無い」

そう言って、神君は、何故か、私の頭を軽く撫でた。
「…?」

急に優しくされて、私は戸惑った。

「あの…」

「面白いな、お前は。

変わった事は言うし

変わった動きはするし

力が強いくせに、危なげで
男を惑わせるくせに、受け入れない。

…本当に、面白い」

「なっ…」

神君の言葉はほめているのかけなしているのかわからない表現だった。

「話は終りだ。行くぞ…ゆき」

「え…」

神君が、私の名前を呼び

手を引いた。

『主は、私と参ります』

晶が、私を守るように、自分の方に引き寄せた。

「そうか」

神君はすぐに『姫』と一緒に先に行ってしまった。

(あれ…?)

その時、見えた『色』は、とても薄い『桜色』で。

(まさか、ね)

私は、あり得ないと、見間違いだと、思う事にした。
『桃色』は『自覚のある恋心』で

『桜色』は『自覚の無い淡い恋心』の色だったから。

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