《MUMEI》

『主が女に興味を示すところなど、初めて見ました』
「そうか? まぁ、ゆきは変わってるからな」

神は、何気なく『姫』の質問に答えた。

『何故、ゆきと?』

「あの娘より、短くていい」

『しかし…』

翔子の名前ですら、神楽に言われて呼ぶようになった事を、『姫』は知っていた。

今まで肉体関係を持った女でさえ、『おい』や『お前』と呼んでいた。

「別に、大した事では無いだろう。

これからもゆきの監視は続けるぞ。

…いいな」

『はい』

『姫』は頷いた。

この一見大人びた主が、実は一族と、恵まれた容姿のせいで、初恋も迎えないまま、女を…自分を受け入れている事を、生まれた時から一緒にいる『姫』だけは、気付いていた。

しかし、相手があの

ゆきでは

これ以上の進展は無いと

『姫』は思っていた。

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