《MUMEI》 洋平と人影. 洋平は暗闇の中にいた。 『どこだ…ここ‥?』 どこを見渡しても一面黒の世界は、今にも洋平を喰らい尽くしてしまいそうだ。 洋平は視点が定まらずに、立ち眩みをおぼえた。 『お〜いっ!』 誰かいないのかと声を張り上げてみるが、返事はない。 聞こえてくるのは、虚しくも自分の声だけだ。 状況が飲み込めないまま、恐怖が洋平を支配し始める。 『逃げなきゃ!』 洋平は走った。 がむしゃらに光を求めて。 走って、走って 体力の限界まで走り続けて漸く一筋の光を見つけた。 『あれは…扉?』 その光は、どうやらその扉の奥から漏れているらしい。 洋平はその扉にゆっくりと近付くと、そっと中を覗いた。 ずっと暗闇にいたせいか、目が痛い。 洋平は、眩しい目を無理矢理こじ開けて、中の様子を伺った。 『何だ…あれ‥。』 まだ目が光りに慣れていないせいかよく見えないが、何か瓶の様な物が棚に陳列されているらしい。 洋平がじっと目を凝らしていると、いきなり目の前に人影がヌッと現れた。 『見たな…。』 その人影はそう言うと、いきなり洋平の首をわしづかみにした。 『う…あ‥うぅ…』 呼吸が上手くできず、助けすら呼べない。 助けて… 誰か‥ 助けてくれ!! 洋平は首に巻き付く手を振りほどこうと抵抗するが、その力は恐ろしい程に強い。 洋平の抵抗はまるで無意味だった。 前へ |次へ |
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