《MUMEI》
初バイト
結局、四条烏丸の日本料理屋でお運びさんのバイトが決まった。

着物を着ての接客のため時給が他のバイトよりも少し高いのが魅力だった。




バイト初日。接客係のリーダーから着付けを習う。


「慣れたら10分くらいで着れるから安心してな」


って言われたけど…、疑いたくなるほど大変なんだけどー。



バイト自体が初体験の美樹子はぐったりだった。


こんなんならコンビニとかにすれば良かった…
さっさと帰って寝よ…



店の裏口から出ると厨房のバイトらしき男子が数人座っている。


「あ、新人さんや!」


うっわぁー、すっごい嫌な空気…
声かけないでよ!


「お疲れ様です。大谷です。よろしくお願いします」


なんでこんな裏口で挨拶なんか…


「一回生?現役?」


どうでもいい質問が飛んでくるが一応答える。


「じゃあ、俺とおないやわ」


そう言ったのは調理補助をしている浅井くんだった。


浅井くんの服装はアシンメトリーな不思議な真っ黒の服だった。


「ギャルソンぽいね」


少しだけ誉めてみた。


「アバンギャルドやろ」


良く言えばね…


「俺、服飾の専門に通ってんねん。これも手作り」


「へぇ〜、自分で作ったんだぁ〜」


まさか手作りとは思わず、普通に感心してしまった。


「イベントとかやってるから興味あったら言うてな」

イベントかぁ…
なんか面白そう…


「うん!何かあったら声かけて」



美樹子はバイトに希望を見出だそうとしていた。

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