《MUMEI》
魔女の剣
ナイフを片手に、剣士のように斬り掛かる。
式夜と比べても遜色が無い、それほどの鋭さ。
ギン!!
だが相手が悪い。
剣とナイフを打ち合わせる事、数十。
ハンディングの体には幾つかの裂傷。
瞳は紅く染まり、昏い刻印は蠢くようにハンディングの体を蝕んでいく。
煌々と散り逝く紫の燐光と紅い血。
振るうナイフは黒い線に。ただ、疾く、疾く。
「・・・・・・・・・・」
「エルシオンの姫」と呼ばれた魔女はその身にある魔力を使いながら何かを謳う。

「・・詠唱などさせない!!」
何を感じたのか・・アルトレアは剣に魔力を籠めていく。
ギィィン!!
剣が防がれる。
不自然な違和感・・
「いかに魔術で強化されていようと・・!!」
焦りが口に出る。
ギィン!ギィン!!ギギィン!!
剣戟はいつしか全力となり、連なるように響く。
圧倒していたはずの力量の差。
だが、どれほどの速度で打ち込んでも・・
ギィン!!
防がれる。
「ならば・・・そのナイフごと!!」
光を帯びた「エクスカリバー」が確かな踏み込みと彼女自身の技で振り下ろされる。
バギィィン!!
砕け散ったナイフの向こうに、崩れ落ちるハンディングの姿があった。

「邪魔ぁぁぁああああ!!」
ズドン!
光の柱が突き立つ。
「っとに数ばっか多い!!」
彩詩とロアは互いの背を護るように周囲の敵をなぎ払う。
「も〜彩と戦ってると、こんなのばっかり!!」
伏せた彩詩の頭上を「クロノ・レベリオン」が駆け抜け、近寄って来ていたコリーア軍、数人をまとめて斬り捨てる。
「贅沢言わない!!私だって困ってるんだからね!!」
伏せていた体を起こし、正面に向かって一斉掃射。
50を超える矢が次々とコーリア軍を薙ぎ倒す。
「たかが女二人になにを手間取ってい・・」
ズガン!!
ロアが投げた「クロノ・レベリオン」が指揮を執っていたらしい人物を貫く。
「残念ね。」 「女は女でも、」
「「戦乙女ですから!!」」
投げた槍の代わりと言うかのようにロアは彩詩の腰にあった「クリムゾンローズ」を抜き、さらに複数の敵を斬り伏せる。
「ちょ・・それ私の!!」 「ハィハィ、弓しか芸の無いのは静かにしてる!!」
乱戦、その中に在って、舞い踊る二人の騎士。
「っと!!」 「やっば!!」
ズドン!!
咄嗟に飛びのく二人の間に落ちる雷。
「一人ずつバラバラにして殺せ!!」
雷を落とした張本人、ローエンが声をあげる。

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