《MUMEI》
昔話
自室に戻った私は先に風呂に入り、それから離れで食事を済ませた。

季節はいつの間にか夏に近付いており、先に汗を流すのが、私の習慣になりつつあった。


『今日もお疲れさまでした、主』

「晶もね」

再び屋敷の自室に戻った私は、今日も一日無事に終える事ができて、ホッとしていた。

ただ、晶の体の『銀』は、鳴神の力を吸収してから、色褪せる事は無かったが、やっぱり全く栄養を与えないのは、何となく心配だった。

だから、私の護衛も兼ねて、私達は毎晩一緒に眠り、私の生気を晶に与える事だけは続けていた。

最初は緊張してなかなか寝付けなかったが、晶が本当に何もしないのがわかってからは、安心して熟睡できるようになっていた。

「今日もお願い、晶」

『はい』

布団に入ってきた晶に、私は頼んだ。

「父さんの話の続き、聞かせて?」

鳴神の力と共に記憶も受け継いだ晶は、毎晩私に父…神尉の話を聞かせるのが日課になっていた。

『はい』

晶は父が生まれた時の事から、順番に少しずつ語ってくれていて、丁度昨日は父が私のように『守護神』の仕事に慣れてきたところだった。

もっとも、父がそうなったのは、わずか十歳の時だった。

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