《MUMEI》

父は小学校に通いながら、『守護神』としての仕事もこなした。

その学校は、幼等部から大学部まであるエスカレーター式の有名校―

和泉学園だった。

和泉学園の理事長と『守護神』を知る偉い人は代々繋がりがあり、御剣一族の直系は、そこに通う事が義務付けられていた。

だから、父の妹の、神楽様も、その息子の神君も、和泉学園に通っていたのだ。
それから、もう一つ。

直系は、『守護神』になる確率が高いので、幼い頃から剣道を習わされる。

また、女性である神楽様は、護身術も合わせて習わされていた。

女性は、直系や分家の区別なく、そう教育されていた。

生まれた時から、たくさんの義務を背負わされた父。
父と神君の状況は、多分似ていたはずだ。

しかし、違うのは

そんな中でも父は子供らしい明るさを失わなかった。
父は、神楽様や周りの人達にとって、その明るさ・無邪気さは救いだった。

やがて、中等部に進学した頃から、父は異性に注目され始める。

元々、小柄だった父の身長が一気に伸び、それまでガキ大将的なイメージしか無かった父の外見が、男性的なものに変貌したからだ。

『…今宵は、ここまでに。
もう、お休み下さい』

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