《MUMEI》

「…もう?」

私は続きが知りたかった。
これから、高等部に進学した父の話を。

それから、もっと先にある、母の話を。

しかし、晶は無言になったかと思うと、すぐに目を閉じ、寝息をたて始めた。

(まぁ、いいか)

明日、聞けばいい。

私はそう思い、眠りについた。



『申し訳ございません、主』

眠るゆきに晶が囁いた。

『この先は、主に語ってはならないと、きつく鳴神様に言われております』

と。

何故なら…この先、鳴神の主―ゆきの父、神尉は、一族の重圧や『守護神』としての苦悩の末、神のように機械的に仕事をこなす一方で …

言い寄ってくる女は

実の妹の神楽すら、迷わず相手にする

そんな、荒んだ生活を送るようになってしまうからだ。


『そんな話を姫にはするな』

鳴神は、主の名誉の為に、最期にそう言い残した。

『承知いたしました』

晶も、父のそんな話はゆきを悲しませるだけだから、語るつもりはなかった。

ただ、神尉の荒んだ生活はゆきの母親に

あの、

『御剣以外の守護神の一族』

の女性に会った事で一変するのだが…

ようやく御剣に慣れてきたゆきに、晶はそのことを話すべきか迷っていた。

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