《MUMEI》

「何なの?!一体?!」

私に『姫』と同じ神子装束を着せながら、紗己さんは怒っていた。

(本当に、急に、どうしたんだろう?)

離れに朝食時しか来ない神君が、わざわざ私を呼びに来るなんて。

それに…

「紗己さん。『あの方』って?」

「多分、御鏡(みかがみ)の『守護神』の事じゃないかしら?」

紗己さんはそう言って、私の帯をキュッとしめた。

「きつくない?」

「大丈夫。御鏡って?」

それは、初めて聞く名前だった。

「よくわからないけど、御剣一族とは別の方法で、国を守る一族らしいわよ」

「そうなんだ」

そんな一族がいるなんて、初めて…

(あ…)

初めて私が神楽様に会った時。

神君は、『あの方』と言っていた。

ただ、神楽様がその話題をすぐに変えてしまったから、私は忘れてしまっていたのだ。

『主。…大丈夫ですか?』
「うん。…見られただけだし、何もされてないし、大丈夫よ」

それに、きっと神君は私の裸などきにしていないと思った。

『そうではなくて…』

「? 他に、何かあるの?」
『いいえ。
これから先、何があろうとも私は主の側におります』

この時。

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